「来年の五月から、ナムトに行こうと思うんだ」
結果的に、結婚生活は五年だった。
先月の末にようやく総馬が開発したダイオキシンを含まない除草剤を商品化にこぎつけられた。
これからはTS除草剤は回収されていくだろう。
もうこの国での総馬の役目は終わった。
彼の口から語られるその言葉を、何ともぼんやり捉えていた。
和泉は手を伸ばし、総馬の目尻から頬を撫でた。
くしゃりと笑った顔。
もう三十を超えた男の疲れた顔だった。
老けたなぁ、私もこの人も。
そう思った瞬間、あばらが折れるかと思うほどキツく抱きしめられた。
一瞬息が止まる。
だが、縋るようなその手と震える肩にすぐ気付いたので抵抗はしなかった。
両手を伸ばし、硬めの髪ごとその頭を撫でる。
「今までありがとう」
くぐもった声。
和泉は頷いたが、これから先の人生が全く浮かばなかった。


