「結婚ってだけでもお金がかかるのに、離婚となると慰謝料まであるのに」

「ほんっと和泉さんはお金のことだけですね!」

やけくそのように島さんが声を荒げた。


「落ち着いてください」

「あなたが寺田さんのこと全然分かってないからですよ!」

「そりゃ他人なんですから分かるわけないですよ」


そう言えば、ハァと呆れたように大きなため息をつかれた。
しばらく額に手を当て、何か考えていた。
それから、ゆっくり口を開く。


「証拠がほしいんですよ、あの人。自分が和泉さんと一緒にいたっていう」


証拠。
島さんの言葉を聞いて、すぐにピンときた。
同時に、女々しい男だな、とも思った。

寺田総馬も考えたのだ。
自分がナムト国へ行けば和泉はついてこない、と踏んだのだ。
そして、離婚すれば和泉は寺田総馬のことを忘れる、と。

人のことをどんだけ冷酷だと思っているのだ。
結婚した相手のことを忘れるわけがないだろう。
忘れても仕方ないと思われるような態度をとっていた和泉も和泉だが。

つまり、和泉の記憶には残らなくても、記録には残しておきたかったのだろう。
自分と和泉が結婚していたことを。