一瞬だけ、考えたのだ。
ここで和泉が断って、それからのことを。
別の人と幸せそうに生きる総馬の姿を思い浮かべた。
今ならふりだしに戻せる。
総馬も和泉も。
有名になりすぎた気はするが、まだ別の幸せを探す道はある、と。
だが、悲しいかな和泉は欲望に忠実だった。
だって目の前にティファニーだ。
「はい、喜んで」
そう微笑んで、ティファニーの結婚指輪を受け取っていた。
ティファニーだし。
そりゃあ頷くしかない。
「そ、そうか」
こわばっていた総馬の顔も一瞬で喜びの色を帯びた。
「これからもよろしく」
そう、笑顔で言った総馬。
和泉はティファニーの箱ごと総馬の手に自分の手を重ねる。
包み込まれる感触に総馬が油断している隙に、その頰にキスをする。


