「恐ろしきキノコ人間も、和泉とだったら見に行く」
「私はイヤですよあんな破滅的につまらないB級映画」
数ヶ月前あまりのつまらなさにネットで大炎上した映画を持ち出されても。
つまり総馬は何を言いたいのか。
「回りくどいです」
「優先順位だ。他の人とだったら行かないけど、和泉とだったらどんなつまらないことでも行きたい。苦手なケーキ屋にも、だ」
優先順位。
懐かしいな、と和泉は思う。
出会ったばかりの頃から、総馬と和泉は変わった。
関係だけでなく、それぞれの考え方も、ゆっくりと船が波に揺られるように変わってるはずだ。
ぼんやりとそう思っていた時。
目の前に小さな箱を差し出された。
寺田総馬の無骨な手には似合わない、ファンシーなパステルブルー。
少し目にチカリとさす水色。
「結婚しよう」
箱を見て、総馬を見て。
凛々しくつりあがったその眉や、緊張でひきつる口元を見て、和泉は口をつぐんだ。


