もしも、を考えれば簡単に想像がつくのだ。
和泉と別れた後、寺田総馬は少し泣いて、そこに現れる優しい女性。
彼女に励まされて、二人は手を取り合ってそれからを生きていく。
文字通り、手を取り合って二人三脚で生きていく。
総馬はきっと、誰かとそういう風に生きていくような人だ。
まだ見ぬ柔らかいで正しくて、和泉よりずっとまともな女性と笑い合う寺田総馬。
イメージしたその姿はしっくりきていた。
多分、和泉と総馬が何の屈託もなく笑いあえることはこれからもない。
だから、和泉は口をつぐんだ。
「優先順位があったんだ」
眉間にしわを寄せて。
目線は斜め下。
どこかぶっきらぼうに寺田総馬はそう言った。
「はぁ」
洗濯物をたたんでいた手を止めて、和泉は総馬を仰ぎ見る。
一体何の話だと視線で問いかける。
そもそも、総馬は格好からしておかしかった。
ビシッと決めた黒のアルマーニのスーツ。
今日は何かの式典だったのか。
似合ってないわけではないが、帰宅したのならさっさと堅苦しい上着は脱げばいいのに、とは思った。


