頭の冷静な部分では分かっているのだ。
お金がなくてもいいから、総馬と一緒にナムトのために働いてくれる人。
そんな女性と一緒になった方が幸せなのだと。

実際に、今までも何人かそう言ってくれる女性はいた。
総馬にはもったいないほどいい女だった。

自分が周りから「趣味が悪い」と言われているのは知っているのだ。
分かってる。
知っているのだ。
どれが一番正しいのか、なんて。
それでも。


「総馬さんはただの人間です。おごるな」


その言葉が頭を回る。
そう言ってくれたのは和泉だけだった。

ヒーロー扱いも善人扱いもしなかった。
総馬という一人の人間の力量を考えて、出来ることを考えて。
現状をあわせ見て。

そうやって、自分の目で物事を見ようとするところが羨ましかったのだろう。

彼女を自分のものにしたなどと思ったことはない。
彼女は総馬には及びもつかない世界で生きている。

歩調が合うことはないし、同じ景色を見ることはない。

バラバラの足取りで。
違う景色を見て。

それでいて、繋いだ先の手は、和泉のものであってほしかった。