「呆れた」

あなたって、と小さな声。

「そんな風にしか人を判断できないんですか」


別れた方がいい、別れるべきだ、と。

彼女の表情がそう語っていた。
和泉はただ黙っていた。


「知ってますよ」


知っているのだ。
和泉だって知っている。

自分が寺田総馬には不釣り合いなくらいズルく自己中心的だということは。

胸元のネックレスが光る。
いつかの骨董市で寺田総馬が和泉に似合うと言ってくれたものだ。

寺田総馬は誠実だ。
いい人だ、それは認める。

だけど、どうしようもないのだ。
和泉は盲目的に彼を信じることはできないし、献身的に彼に尽くすこともできない。
どうしたって、最後の判断基準は自分なのだ。


和泉は一息つくと席を立った。

島光はその場で俯いたままだった。

街が茜色に染まる。
夏の夕方の暑さから逃げるように、和泉は速足で帰った。