「大一新聞、石田新聞、週刊西春にナムト国の除草剤について記事を書いた平塚光明。ナムト国の除草剤関連の報道をしたメディアが次々と発禁処分やリストラされてるんですよ」
国が認めるわけがないのだ。
除草剤が人体に影響を及ぼすなど。
仮に数十年後に影響が見られたとしても、人体実験など行えないので関連性は見られないと一蹴されるだろう。
「国は絶対認めないと思いますよ。というか、私はもう手遅れだと思ってますし」
和泉のその言葉に、島光は思わずといったように立ち上がった。
彼女の手が振り上げられる。
殴られることも視野に入れていたので和泉は動かなかった。
手を出せば、その理由がどうであれ暴力をふるったほうが悪いのだ。
しかし、島光は冷静だったようで。
振り上げた手をそのままに、真顔で止まった。
怒ってるな、とぼんやりと思った。
「今も五万人以上のひとがナムト国の除草剤を取り除こうと動いてるのを知って、そう言うんですか?」
彼女の声は怒りに震えていた。
和泉は黙って怒りに燃える目を見つめる。
彼女もきっと、和泉の考えなど分からないだろう。
「ゲリラ戦が始まったのはいつからか知ってます?五年前ですよ。除草剤が使われたのは四年前からです」
四年間の定期的な除草剤の散布。
散布された量は推定八万三千キロリットル。
その間も、ナムト国の人達は畑を肥やし川の水を飲んで生きていたのだ。
「四年間も除草剤に汚染された土地の農作物と水を身体に入れてるんですよ。もう取り返しのつかない地点にきてるんです」
和泉が真顔でそう告げる。
島光は険しい目で見つめてくる。
震える唇から声が発せられた。


