島光。
彼女が入学する時は大学でもかなり噂が回っていたのだ。

全国に展開する大手加工食品会社、島グループの代表取締役社長の娘がこの大学に入学すると。

だから聞いたことがあったのだな、と和泉は思った。

「和泉さんは、寺田さんの手伝いはしないのですか?」

「何を?」

「彼、ナムト国に散布された除草剤をなんとかしようと頑張ってるじゃないですか」


何度か言われてきたこの内容。
和泉は面倒くさいな、と思いながら新聞をたたむ。


「やりませんよ。国に目をつけられるのは御免です」


和泉があっさりそう言っても、島光は驚かなかった。
大方、事前に周囲に聞いて和泉の性格は知っていたのだろう。

知っていたから、こうして和泉と話に来たのだ。


「寺田さんがあんなに一生懸命なのに、支えてあげようとか思わないんですか?」

「だから国に目をつけられたくないんですって」


分からない奴だな、と和泉は思った。
和泉は先ほどちゃんと理由を言ったのだ。

寺田総馬が頑張ろうが、何万人の人が頑張ろうが、そこは関係ない。
反除草剤活動に参加すれば、いずれ国から何らかの社会的圧力がかけられる。

そう思ったから、和泉は参加しないだけだ。


「自分の保身のためですか」

「そうですよ」

「最低ですね」


さらっと出てきた島光の言葉も和泉は軽く流す。
ここ数ヶ月でその言葉にも慣れた。

寺田総馬と付き合ってはいるが、彼と一緒に落ちるつもりは一切ない。
彼が和泉の足を引っ張ると思ったら、即別れるつもりなのだ。

というか、ここ最近はそのことばかり考えている。