今日こそ、先輩に告白しようと携帯電話を握りしめる。

直接会って告白する勇気はない。

かといって、メールで告白って言うのも、本気にしてくれなそうだし……。

それなら、せめて電話の方がいいよね……。


先輩と同じ部活の友達から入手した番号。
ただの数字の羅列なのに、それさえかっこよく見える。


ポンッと一回タッチしたら、先輩につながるけれど、いろんな気持ちが頭の中でぐるぐるぐるぐる。


いきなり電話してもいいのだろうか。
やっぱりメールのほうがいいのかな……。


公園についたときには、小さな子供がたくさん遊んでいて、すごくにぎやかだったのに、いつの間にかみんないなくなっている。

足元の影はだいぶ長くなっていた。


それでも発信ボタンが押せなくて、ページを閉じてはまた開いての繰り返し。



フーーーッ……。

画面に向かって、おっきなため息が出た。

ほんの少しの勇気が出ない。
携帯を裏返して、包むように手をのせた。

自分の不甲斐なさにがっかりする。

今日も、告白できそうにない。


もう帰ろう、そう思って歩き出した瞬間、かすかに人の声がして振り返る。


「……ぉ……ぃ……」


……誰もいない。

ここには、私しかいないはずなのに、やっぱり声が聞こえる。
どこから……?


「ぉ……いっ!」



えっ……まさか、ここから?



「呼んだか~?」


私は、手に持っていた携帯を見る。

画面には、私と同じ高校生ぐらいの男子の姿が映っていた。


……えっ?なんで?


「んも~、寝てたんだよ~!起こすなよ~!」


携帯の中に映る男子は、とても不機嫌そうに伸びをした。

信じられない光景に、一瞬パニックになりそうになったが、知らないうちに動画サイトを再生していたと考えれば、こういうこともなくはない。

そうだ、きっとそうだ。


私は、慌ててホームボタンを押した。


……あれ?なんでだろ……何回押しても消えない、停止しない……。


この男子、消えない。

強制的に、電源をオフ。



……それでも、やっぱりいる。


えっと……なにこれ?
もしかして……オカルト的なもの……?