数分後、旬と蘭が部屋を訪れた。

やはり日和は旬のもとへ行ったのではなかったのだが、部屋の隅で完全に脱け殻と化す我久に、そんなことを考える余裕など無かった。

我久は、思い当たる節があることをようやく思い出した。
いや、決して忘れていたわけではないから、思い出したというよりは思い付いたと言うべきかもしれない。

あり得ないと思って消していた選択肢を再び呼び起こす。

ただ、その選択肢が正解だとすると、それは最悪のシナリオを意味していた。

日和が、我久と蘭のキスのことを知っているということになるのだから。

だが、どれだけ頭を悩ませても、我久にはもうそれ以外の理由は考えられなかった。

その可能性に絶望した。
今すぐ日和を追いかけたくても、足がすくんで立ち上がれない。