「もしかして、寝てた?」
わざと聞いてやる。
それで、寝てたなんて言ったなら、小躍りしてやる。
だけど
「いや」
優弥は言う。
「……仕事してた」
その言葉に、思わず口を噤んだ。
優弥、忙しいんだ。
Fに他のアーティストのプロデュースに。
そして、初めて思った。
忙しい優弥を、あたしの都合で振り回してはいけないと。
……振り回す気満々だったのに。
何度も言うけど、優弥なんて好きでもないのに!
「じゃ、電話切る。
あんた、忙しいんでしょ」
優弥に言うと
「忙しい」
スパッと言われる。
気遣いも何もない。
そんな優弥に普通ならイラッとするはずが……
「ごめんね、邪魔して」
あたしは謝っていた。
謝りながら思った。
なんであたしが謝らないといけないのだろうって。
あたしは、好きでもないのに付き合ってやってる。
あたしが主導権を握るのが当然なのに。
……疲れていたのかな、長時間のフライトで。



