そのまま、優弥はあたしの背中に手を回す。

シャネルの香水の香りと、優しく添えられた手に、不覚にもドキンとしてしまう。

年下のくせに、女慣れしている優弥は侮れない。






「なぁ……紅。

今夜さっそく……」




そう言った優弥の顔面に、思いっきり肘打ちをかましてやる。

あたしの肘はその鼻に直撃して、優弥は鼻を押さえて地面に座り込んだ。

いい気味だ。

そして、調子に乗った優弥に言ってやる。





「あたしはあんたのことを好きじゃないって事実、覚えていなさいよ?」




優弥は鼻を押さえたまま、あたしを見上げる。




「変な気を起こしたら、東京湾に沈めてやる!!」



「おっかねぇな……」




彼はぽつりと言った。




「おっかねぇけど、俺は貢いだりはしねぇ」




貢がない?

それじゃ、彼氏失格ね。




「それに、癒しになれないかもしれねぇ」




それならなおさら失格だ。




「だが……

絶対に、俺がいないといけねぇ女にしてやる」



「望むところよ」




あたしたちのバトルが、激しく幕を開けた。