「仕方ないわね」
あたしは優弥ちゃんに言う。
「あたし、優弥ちゃんのこと全然好きじゃないけど、付き合ってあげる」
「マジで……?」
「ただ、お試しだからね?
ウザいと思ったら、すぐに彼氏の座から蹴落としてあげる」
あたしの言葉に、なんだか嬉しそうな優弥ちゃん。
その変なサングラスでやっぱり目元は見えないが、いつもへの字の口元が、にこりと笑っている。
優弥ちゃん、笑うこともあるんだ。
「じゃ……まずは優弥ちゃんっての、やめろ」
あたしはすかさずピンヒールで優弥ちゃんの足を踏ん付ける。
優弥ちゃんは苦痛に顔を歪ませた。
そして、
「や……やめてください……紅様」
かすれた声で言う。
いい気味だ。
だけど、気分がいいからやめてやろう。
「優弥」
改めて彼を呼ぶ。
すると、優弥ちゃん……ではなく、優弥は満足げに口元を歪めた。