「あんた? 雛子の眼鏡壊したの」
春哉の背中を見送っていると、少し目を離している隙に日高くんに樹里が噛み付いていた。
慌てて肘をつつく。
事を荒げたくなかった。
分かってる。
と目配らせする樹里。
「雛子に何かしたら許さないから。でも、クラスメイトとして雛子のこと、よろしくね」
その口調はまるで子を守る母親のよな、異様に迫力があった。
「あ、あぁ」
こたえる日高くんを見ると、やはり戸惑うように顔が引きつっていた。
樹里と別れてすぐに日高くんは「中谷さんの友達って、濃いね」と言った。
「でも、自慢の友達、なの」
反射的にそうこたえていた。
それは間違いなく、私が自信を持って言える数少ないことだったから。
でも、余計なことを言ったかもしれないーー。
すぐ後悔した。
確かに樹里はかなり失礼だった。
それなのに庇うようなこと言って、私まで日高くんを悪く思ってるみたいだ。
眼鏡の事も、もう気にしていないのに。
手の平が湿り、胸が騒ぐ。

