そんな柏木さんなのに……
「ごめんなさい……」
可奈がいなくなると、蚊のなくような声で謝るキモオタ柏木さん。
あたしは柏木さんに背を向けたまま、俯いて黙った。
今になって、一体何を謝っているのだろう。
ヨウコのこと?
出張のこと?
高柳君の邪魔をしたこと?
聞く気にもなれなくて、立ち上がった。
そして、早々とこの場を去ろうとした時……
「俺……嫌われたくない……です」
再び弱々しくそう言った柏木さんを、思わず見てしまった。
柏木さんはいつもの柏木さんだけど、やっぱりどことなく弱くて捨て犬のようで。
少し怯えたような瞳であたしを見る。
柏木さんにイラついているのに、柏木さんにこんな顔をさせたくないと思ってしまう。
だけど、あたしは言っていた。
「嫌うも何も、柏木さん、あたしのこと好きでもないでしょ?」



