「待ってるのに、なんで来ないの?」



「なんでって……

柏木さんの家なんて知らないし、柏木さんは来るなって言ったし」



「あ……柏木さん、土下座してる」




慧太郎の言葉にビクリとした。

柏木さんなら土下座しかねない。




「土下座して、許してください、来てくださいと言ってる」





慧太郎はずるい。

そうやって言うと、あたしが来ることを知っているのかもしれない。

なんだか、弱くておどおどしているキモオタ柏木さんを放っておけなくて。

あたしは急いで着替えて、家を飛び出たのだ。






慧太郎との待ち合わせ場所へ向かっている間も、胸がドキドキと音を立てる。

そして、顔がにやけていた。

柏木さんの家なんて行ってやるかと思ったけど、実際に向かうとなると嬉しい。

柏木さんのことを考えるだけで、身体が熱くなる。