南條さんと付き合ってるなんて……
嘘だよね?
何その悪意いっぱいの言い方。
あたしの存在を否定して、自分が優位に立とうとしていて。
結局、みんな河田さんと同じだ。
そして、柏木さんもあっさりと否定するんだろう。
あたしなんかと付き合ってるなんて、柏木さんは……
「嘘じゃねぇよ」
その声で我に返った。
オタク柏木さんよりもワントーン低くて、凛とした声。
自信に満ち溢れた、憎らしいとも言える声。
だけどその声はあたしの耳を甘く刺激して、現実へと引き戻す。
しーん……
部屋の中が静かになる。
柏木さんの近くにいる女性だけじゃない。
柏木さんはみんなの注目を浴びていた。
「え?
……柏木さん。冗談キツイですよ」
冗談キツイのはあんただよ、なんて言えない。



