慧太郎はぎゅっと口を噤む。 それで分かった。 やっぱり柏木さん、あたしの身体の心配ばかりしているんだ。 東京の出張に行った時、河田さんがあたしを無視し続けても何も言わなかった。 むしろ、河田さんと二人で楽しそうにしていた。 どれだけ辛くて切なかったのか、モテる柏木さんには分からないんだ。 あたしは扉を開け、バルコニーを飛び出していた。 慧太郎は慌ててあたしを呼んだが、振り返ることなんてしなかった。 溢れてくる涙を必死で我慢した。