「南條さん」
中根さんはあたしを呼び、あたしは飛び上がった。
中根さんのつり上がった細めの瞳は、あたしをしっかり捉えている。
「柏木がふざけてるけど、愛想尽かさないでやってくれ」
「……はい」
中根さんには刃向かえなくて。
刃向かえないようなオーラがあって。
頷いてしまうあたし。
「これでも柏木、精一杯頑張ってるんだから」
「え?」
思わず聞き返してしまったが……
「はぁ?
中根さん、酷いっすね。俺が何を精一杯頑張ってるんすか?」
そんな柏木さんを見て、笑ってしまった。
何を精一杯頑張っているのかは、はっきりは分からない。
そして、やっぱり思った。
あたしは柏木さんが大好きなんだって。
キモオタ柏木さんはもちろん、チャラ柏木さんも。
ドキドキしたり嫉妬したりして、柏木さんから目が離せない。



