それなのに、 「南條!」 なぜか柏木さんが遠くからあたしを呼ぶ。 やめてほしい。 あたしは真っ赤な顔のまま、下を向く。 そんなあたしにお構い無しで、柏木さんは続ける。 「南條、こっち来いよ」 そんな柏木さんに言ってやる。 「死んでも嫌です」 顔を上げ柏木さんを睨むと、カッコいい柏木さんと視線がぶつかって。 胸がドクンと音を立てた。 駄目だ駄目だ、こんな時にまでドキドキしてしまって。 それなのに、柏木さんは 「つれねぇ女だな」 なんてこぼしたりしていて。 余計に腹が立った。