でもその裏で、あの事件のせいで、希は人を簡単に信じる事が出来なくなっていた。
あの時希は、光輝に連れられて家に行ったらしい。
「忘れ物したから付いてきてほしい」
と言って。
希は快く受け入れたけど、そこで待っていたのは地獄。
家に行くと、小太りの男。
「初めまして希ちゃん、よろしくね」
そう言って差し出してくる手。
「初めまして」
希は笑顔で握手した。
でも、その手が離れる事はなかった。
「は、離してっ…」
離そうともがくけど、大人の力には勝てるはずもなく、光輝に助けを求めようとしても、無視したんだ。
「希連れてきたんだから、早くしてよ」
「え…」
信じてはずの友達に裏切られたんだ。
その日から希は1週間、その男に犯されたんだ。
光輝はその現場をずっと見ていたらしい。
でも、そろそろバレると思った光輝は、1人で親の所に帰っていった。
だから、希は人を信じる事に恐怖を覚えた。
信じられるのは、身内の人間と組、族の人間だけだった。
そんな希が、自分から信じてみようって一歩踏み出したのが、紅蓮だった。
希は紅蓮と出会って変わったと思う。
自分は何が変わったかなんて気付いてないと思うけど、まず雰囲気が柔らかくなった。
人に対する警戒心も少なくとも減った。
あとは、心からの笑顔が増えたんだ。


