目の前には、5階建てのビル。


薄汚れたその建物。


中は外見とは裏腹に綺麗だった。


「ここだ」


建物内で1番大きいと思われる扉。


その部屋は最上階にあった。


少し装飾もされていて、一際目立っている。


あたしは、深く深呼吸をして重たい扉を押し開けた。


開けた先には、白で統一されたシンプルな空間。


真ん中にソファが1つ置いてあり、そこに偉そうに足を組んで座ってる光輝の姿があった。


「久しぶりだね、希。来てくれると思ってたよ」


何をほざく。


来るように仕向けたのはお前だろうが。


そう思いながらも、光輝の目の前に立つ。


「もう、みんなを傷つけるのはやめて」


あたしはどうなっても構わないから。


「いいよ。希が俺の元に来てくれるのなら」


ニヤッと笑った光輝は立ち上がると、あたしの肩に手を置いた。


いきなり触れられ、恐怖で体が震える。


光輝はあたしの返事なんて聞かず、あたしの唇を塞いだ。


何の抵抗もせず、されるがままのあたし。


気持ち悪い…


ただただ、そう思うだけだった。