「どういう事だよ、桐」


蓮華のいつもより低い声が響く。


「だって、良く知らないけど月影がやられたのも希ちゃんが関わってんだろ?俺らがやられたのも希ちゃんが関係してるとしか考えられないじゃん」


桐の言ってる事は正しい。


正しくてあたしは何も言わず、唇を噛む。


「お前、弱いって言われた事、まだ根に持ってんのかよ!」


蓮華の怒鳴り声が廊下にまで響き渡る。


部屋の前を通っていく他の患者さんが驚いた様子で歩いて行く。


「じゃねぇと、そんな事言えねぇよな。だから弱いって言われるんだよ!」


「うっせぇ黙れ!」


ガッシャーンッ


何かが倒れる音がした。


きっと、桐がやったに違いない。


すると、騒ぎを聞きつけた看護師さんが走ってやって来た。


そして、ドアの前に立ってるあたし達を無視してドアを開ける。


「何事ですか!?」


みんなは、そう言う看護師さんを通り越して、後ろに立ってるあたしを驚いた表情で見る。


あたしは、


「みんな、あたしのせいでごめんね」


控えめにそう微笑むと、走ってその場から離れた。


うまく笑えてたかな?


…ううん。


絶対引きつってた。


今あたしは、どこを目指して走ってるのかなんて分からない。


途中から視界も歪んで、どこを走ってるのかすら分からない。


ただただ、少しでも逃げたくて、走り続けた。