「隙を見て、沢神組組長、沢神竜を殺せ」
とも言われた。
俺は正直殺す気なんて全くなかった。
とりあえず、沢神組の動きを監視して、報告する。
そうすれば俺は、少なくとも嫌な殺しはしなくてもすむし、華子達も狙われないと思ったから。
潜入して1ヶ月が経った頃だった。
「佐賀組のお前がなぜここへ来た」
沢神竜…頭は初めから俺が佐賀組の奴だって事を知っていた。
気付かれるという事は死を意味する。
でも俺の心の中には、恐怖というより安堵の気持ちの方が強かった。
もう人を殺す事もない、華子達を傷つけられる心配もなくなるから。
「沢神組の動きを監視し、随時報告しろ。隙を見て沢神竜を殺せと命じられて来ました」
だから正直に認めた。
そして、
「殺してください。あんな所で働くなら死んだ方がマシです」
死を望んだ。
そんな俺に、頭は
「分かった。黒戸蓮次という男は潜入捜査がバレて死んだ」
静かにそう言った。
最初は意味が分からなかった。
「お前は今から、梶田翠として生きろ。そして俺の傍で働け、いいな?」
ニッと笑った頭を見て、俺は思わず泣き出してしまった。
「ありがとうございますっ」
そして、黒戸蓮次という人間は死に、梶田翠という人間が生まれたんだ。


