「手紙はまだ家に?」
「うん……」
「違うよ」
泣き崩れていた椿が涙を必死に堪え、フラフラと立ち上がると幹部室に歩いて行った。
そして、戻って来た椿の手にはピンク色のシンプルな手紙。
「ごめん桐。桐に内緒でこれを取りに家に帰った事があるんだ」
本当に桐は知らなかったようで、驚いてる。
「読んだ、か?」
言葉を詰まらせながらそう聞く桐に椿は、首を横に振った。
「怖くて読めなくて…」
「そっか…」
2人の間に沈黙が流れた。
と、思ったら、バッと同時にあたしを見る2人。
「え、何?」
「希ちゃん、読んでくれない?」
はい?
あたしが読め?
「いやいや、あたしが読んだらダメでしょ」
断ってるはずなのに、なぜかあたしに手紙を突き出す椿。
「僕達が読んだら、最後まで読めない気がするから」
「希ちゃん、お願い…」
いつもの元気さがない2人。
2人は、笑ってる方が似合ってる。
だからあたしは、
「分かった」
少しでも助けられるなら、そう思って手紙を受け取り、封を開けた。


