「あのね。私は感情が分からないの。」
「うん・・・」
「分かるのはね、怖いと辛い、苦しい・・・かな。」
「・・・うん。」
「楽しいってなに?嬉しいってなに?・・・なにもわからないの。好きも、嫌いも。美味しいとか面白いとか・・・。私には分からない。」
「そっか・・・」
「音ちゃん・・・」
「・・・」
「だから、音姉は笑わないの?」
私は無言で首を横に振る。
違う。
違うんだ。
「じゃあなんで・・・?」
「・・・わからないの。」
「感情が?」
「違うの・・・。笑い方がわからないの。」
「え・・・。音ちゃんどういうこと?」
「どうやったら心から笑えるの?・・・ずっと作り笑いをしてた。小学校に入る前から。本気で笑ったのなんて、数えるほどだよ。まあ、付き合っていた時はずっと笑ってたけど。それ以外は・・・笑ってない。笑えなかった。」
「音姉・・・。」
「もう帰るね。なんか暗くなっちゃったね。ごめん。」
「いや、いい。今日は俺が送る。」
「うん。ありがと、陸。」
「帰るぞ。」
「わかった!またね!」
ニコッと作り笑いをして陸と一緒に部屋を出た。
