「音姉。なんで笑わないの?」
羽紅がそう言ったから、私は
「え?なんのこと?笑ってるよ?」
作り笑いで言葉を返す。
羽紅は悲しそうな顔をする。
なんでそんな顔するの?
「音姉はさ、なんで本気で笑わないの?なんでいつも作り笑いなの!?昔みたいに笑ってよ!小さい時は俺と遊んでる時とか、いつも笑ってたじゃん!なんで笑わないの!?」
羽紅がだんだんと声を荒らげる。
「なにそれ・・・私が小さい時本気で笑ってた?・・・笑わせないで!本気で笑ってたわけないじゃない!」
「は・・・?どういうこと?」
「あんなに・・・!あんなにひいきされて!私だけ虐待受けて!それなのに笑えるわけないでしょう!?わたしはお姉ちゃんだから。羽紅に心配かけちゃだめだって、自分に言い聞かせて。無理して笑ってたの!」
「っ!」
「あのことがあってから、全部が作り笑いよ。本気でなんて笑ってない。今だってそう。笑ってない。ううん、笑えない。」
「え?」
「笑い方がわからない。ずっと笑ってなかったから。」
「音姉・・・。」
「もう帰る。・・・これ以上私の中に踏み込まないで。」
「なんでだよ!?俺らは兄弟なのに!双子なのに!なんで助けようとしちゃダメなんだよ!」
「兄弟?双子?なら・・・それなら気づいてよ!私がどれだけ辛かったか分かる!?」
「音姉・・・。ごめん。」
「いいよね、羽紅は。」
「え?」
「親に愛されて。仲間もいて。裏切られたことも、いじめられた事も、大好きな人が・・・。大好きな人が死んだこともないんでしょ!?」
「音姉・・・?俺と離れてる間になにがあったんだよ?」
「っ!・・・羽紅にいう必要はない。帰るから。・・・じゃあね。」
そう言って私は部屋を出て幹部室に戻った。
