「「「こんにちわっす!」」」
「おー」
適当に返事をする羽紅。
ほかはしない。
「誰だ?女がいるぞ?」
「あっ!あいつ咲坂音羽だぜ?あの、雷竜の元姫の。」
「っは!?雷竜の次は青嵐かよ!!ふざけんな!」
下っ端たちは口々にそう言っている。
・・・そうだよね。
やっぱり雷竜の元姫が、しかも現姫を虐めていたって言われたらなおさら。
そんな人が、自分たちの大切な場所に来たら嫌だよね。
普通だと思う。
私は羽紅の服の袖をギュッと掴んだ。
「大丈夫。」
「え・・・」
羽紅は私に小声で大丈夫と言ってくれた。
そうだよ。
大丈夫。
だって1人じゃないもん。
そんなことを思っていたら、
「お前ら静かにしろ!真実を知らねえのに、そんなこと言うな。」
と陸が言った。
陸・・・。
陸の一声で倉庫がしんと静まる。
「こいつは今日から青嵐の姫だ。」
「「「「!!!!」」」」
その言葉にすごく驚いている下っ端たち。
「音羽、挨拶。」
!
私が少し勇気を出せばいいんだ。
怖くても頑張るんだ。
だって頑張るって決めたもん。
頑張る。
みんなの前で挨拶するんだ。
そう思って俯いていた顔を上げる。
でも。
ただでさえ人が苦手なのに、なん百人も人がいると手がとても震える。
声が出ない。
羽紅の袖を掴む手に力が入る。
「大丈夫。頑張れ、音姉。」
そう言ってくれる羽紅。
私は1回下を向いて深呼吸をしてから、また顔を上げる。
大丈夫。
もう出来るから。
私はしっかりと前を向いて、口を開いた。
