「っ!!」
顔を上げなくてもわかる。
だってさっきの立ち位置で私の腕を掴めるのは。
羽紅しかいないから・・・。
カタカタと体が震える。
怖い。
相手は男で。
しかも羽紅。
「・・・して。」
「え?」
「離して・・・!」
私の口から出るのは少し震えた小さな小さな声だけなんだ。
「なぁ。それで隠してるつもり?」
「なにを言っているのぉ?羽紅」
「なあ?顔を上げろよ。・・・咲坂音羽」
「!!」
ビクッと肩が揺れる。
「咲坂音羽って・・・羽紅の双子のお姉ちゃん?」
「ああ。母さんと父さんを殺したヤツ。」
「っ!!ごめんなさい!ごめ、なさい!ごめ、ん、なさっ、ごめんなっさ・・・ハァハァハァハァ」
息が荒くなる。
頭の中に蘇るあの日。
「ごめんなさっ。全部私のせ、い・・・」
「ねえ!ちょっと!!大丈夫?」
可愛い感じの男の子が私に触る。
それによって思い出す。
ヤダ。キモチワルイ。
「やめっ!さわら、ないで!!」
息が苦しい。
肺が痛い。
呼吸が出来ない。
私はそのまま意識を手放した。
