夏の嵐と笑わない向日葵



「そろそろ、花火が上がるよ」

「え、そうなのか??」


嵐君はあたしに引かれるまま、立ち上がる。


このお祭りに来るのは久しぶりだけど、家から近いから、毎年、縁側でノラと花火を見上げていた。


「境内で見るのは久しぶりだけど、すごく綺麗だよ」

「なら、絶対見てー!」


そう言ってニカッと笑う嵐君にあたしも頷いた。
その瞬間…。


ヒューッ、ドォォォーン!!


「あっ…」

「おぉっ!!」


あたしと嵐君はほぼ同時に声を上げて、空に上がる大きな花火を二人で見上げた。


緑に、青に、赤の大輪の花が、夜空に咲き誇る。
そして、刹那に消えていく様は、本当に美しいと思った。


しばらく、2人で花火を見上げた。
すると、嵐君が先に口を開いた。


「本当に綺麗だな……」

「うん、本当に……」


あたしは、花火から視線を逸らさずにそう答えた。



本当に、こんな綺麗な光景を見たのはいつぶりだろう。
あぁ、嵐君とみたキラキラの海以来だ。