夏の嵐と笑わない向日葵



ドンッ、ドンッ、ピーヒャラ♪



和太鼓の規則正しいリズムに合わせて重なりあう笛の調べ…祭り囃子があたし達を出迎える。



夜空の星を霞めさせるほどの提灯の明かり、出店の明かりが輝いている。


「向日葵、行きてーとこあるか?」


嵐君に手を引かれながら、人通りの多い出店通りの中を歩く。


「お祭り、久しぶりでどこに行ったらいいのか思いつかない」


「そんなら、祭り界のプロフェッサーの俺が案内してやるよ!」



嵐君、ここのお祭り初めてのはずなのに…。
でも、祭り君の何だか分からないけど、はりきる嵐に任せる事にしよう。



「あーこれ、これなんて良くね?」



嵐君が立ち止まったのは、射的の出店の前だった。

嵐君はというと、すでに腕まくりをして、店員さんにお金を支払っている。


「あの猫、ノラに似てんな」


的である景品の中に、ノラそっくりの三毛猫のぬいぐるみがある。