夏の嵐と笑わない向日葵




「その…すっげぇ、可愛い」

「っ!!」


照れながら真っ直ぐに伝えてくれる嵐君に、あたしは真っ赤になる。


可愛い……とか、お世辞に決まってる。なのに、何でだろう……すごく嬉しい。


あぁ、そっか…。

あたし、嵐君にそう言ってほしくて、浴衣を見せるの、楽しみにしてたんだ。


こんな感情、自分でも気づかなかった。


「嵐君…」


だから、あたしもちゃんと伝えよう。
嵐君だって、あたしに伝えてくれたんだから。


「向日葵?」

「嵐君も…カッコいい……です」

「っ!?」


語尾が小さくなってしまったけれど、嵐君は聞き取れたみたいで、口元を片手で覆い、俯いた。


あ……。
嵐君の耳、すごく赤い。嵐君、照れてる…?


「そっ…か、やべ……嬉しすぎて死にそう…」

「あ、嵐君??」


嵐君はバッとしゃがみこみ、そっとあたしを見上げる。あたしは腰を屈めるようにして、嵐君の顔をのぞき込んだ。



「あんまり、可愛い事言ってんなよ?」

「え、えぇ?」


じろりと恨めしそうに嵐君に睨まれる。


そんな嵐君を前にオドオドしていると、嵐君はグイッと腰を屈めているあたしの首の後ろに手を回した。