夏の嵐と笑わない向日葵



「おじいちゃんが着てた、格子柄の浴衣があるよ」

「向日葵も、浴衣着て行こうな」


嵐君はうきうきが止まらない小学生のように、ノラを抱き抱えるあたしの両肩を後ろから掴み、グイグイとおじいちゃんの部屋の方へと押す。
  

「で、帰ってきたら線香花火しよーぜ」

「うん、分かった」


線香花火の事、覚えてくれててんだ…。
なんだか、嬉しいな。


「あ、でも俺、浴衣着れっかな」

「着付け、してあげる」


これでも、着付けは一通りできる。
これも、おばあちゃんが教えてくれたんだけど。


そうしてたどり着いたおじいちゃんの部屋。


スッと部屋の襖を開けると、小さい頃に微かに覚えているおじいちゃんの匂いがした。


「ノラ、ちょっと降りててね」


あたしはノラを下ろして、電気をつける。

カチッ 


この部屋に明かりをつける事自体、久しぶりだった。

おじいちゃんの部屋のタンスに近づくと、ホコリがたまっていた。

ここも、掃除しないとなぁ…。

そんな事を考えながら、タンスを開けると、そのに格子柄の紺地の浴衣が入っていた。