夏の嵐と笑わない向日葵



「ただいま、ノラ」


家にたどり着くと、先に家に入ったあたしの足元に、ノラがすり寄ってくる。



「ニャー」

「ノラ、おいで」


あたしはノラを抱き上げて、その毛並みに沿うように背中を撫でた。


あの日、子猫だったノラは、3年たってずいぶん大きくなったと思う。抱き上げると、重くなったなぁと感じた。


「なぁ、向日葵ー!!」

「??」


興奮したようにこっちに駆け寄ってくる嵐君に、首を傾げる。すると、嵐君は手にもっていた紙をあたしに見せた。


「じゃーん!これ、行くしかねーだろ!!」

「……夏祭り、開催のお知らせ…?」


日付は8/4、時間は17:00になってる。
これ、明日だ……。



どうやら、家の近くにある神社の境内でやるみたいだ。


「祭りだぞ、祭り!向日葵、行こーぜ!」

「お祭り、そんなに行きたいもの??」


おばあちゃんがよく連れてってくれたっけ。


おばあちゃんは「好きなもので遊んでいいよ」って言ってくれたんだけど、楽しみ方がよく分からなかった。


「夏といったら祭り、そんで花火、アイスだろ!」

「そう……なんだ??」

「な、向日葵!浴衣とかねーの?」


嵐君の中では行く事が決定しているみたいだ。
あたしは、苦笑いを浮かべる。