夏の嵐と笑わない向日葵




ズキンッ


なんでだろう、胸がすごく痛い。
嵐君が誰を想おうと、あたしには関係ないはずなのに…。


「嵐君、モテそうだもん、きっと好きになってもらえるよ」



それに、こんなに優しい人が、受け入れられないはずかない。東京には、あたしなんかよりずっと素敵な女の子がたくさんいるはずだ。


嵐君にだって、好きな人の1人や2人くらい、いてもおかしくない。


「なぁ、向日葵には、そんな風に思う奴、今までいなかったか?」

「あ、あたしは……」


今まではいなかった。

あたしには、ノラが唯一の話し相手だったし、ずっと一人で生きてきたから…。


「今までは、いないよ」


じゃあ、今は??


そう自分に問いかけてしまう。
その言い方だと、今は違うと言っているようなものだ。


考え込んでいると、ブオッと風か強くふいた。


「良かった、チャンスはあるみてーだな」

「え?」


嵐君が何かを言っていたけど、うまく聞き取れなかった。  
 

それを聞き取れず、聞き返すと、嵐君は「なんでもねー」とあの切なそうな笑みであたしの頭を撫でた。