夏の嵐と笑わない向日葵



「向日葵、やりたい事はやりたいって言え。俺は、向日葵のしたい事は全力で付き合うし」


まるで、あたしのお父さんのように論されて、あたしは自然と頷いてしまう。


「全力で…線香花火??」

「おう!!全力線香花火!!」


ニッと笑う嵐君に、あたしは小さく笑う。


全力で線香花火したら、火の玉が落ちちゃう気がするけど、嵐君の言ってる意味はそういう事じゃない。


あたしの為に言ってくれたんだ。


「ありがとう、嵐君…」


自然と浮かぶ笑みに、嵐君は嬉しそうにまた笑った。


あたしが笑うと、嵐君は嬉しそうに笑う。それに気づいたのは最近の事だ。



ピッ、ピッ


「お会計、752円になります」

「はい、これで」


おさいふを出そうとすると、嵐君はそれを制してあたしの分も払ってしまった。


「嵐君、あたしも出すから…」

「こーみえて、バイトしてんだ、俺。ガソリンスタンドだけどな」

 

嵐君はそう言って、あたしの頭をワシャワシャと撫でた。


「ってか、ここは甘えて俺を立てる所!」

「そ…ういうもの??」


男の子と一緒に買い物とか、行った事無いからわからないや。嵐君は、こういうの慣れてるよね…。


ズキンッ


あれ……?
まただ、あたしの胸、今度は痛いや。