「お前さんに向日葵って名前つけたんは、この向日葵畑からとったんよ」

「え……?」


両親がつけてくれたあたしの名前。

おばあちゃんは、お母さん方のおばあちゃんで、小さい頃からこの家で育った。


「お母さんはな、毎年この向日葵を楽しみにしおってん。夏が来るのを今かって待っとったわ」


おばあちゃんは悲しげに向日葵畑を見つめた。


おばあちゃんも、辛かったはずだ。
だって、娘に先立たれてしまったんだから。


「おばあちゃん……」

「空を向くように、いつでも前を向いて歩いて行ってほしい」

「え……?」


おばあちゃんは突然そんな事を言い出す。
あたしは、首を傾げた。


「私は、あなただけを見守るから……向日葵って名前をつけた理由だって言っとったよ。最後のは、向日葵の花言葉やね」



お母さんが、そしてお父さんがそんな理由でくれた素敵な名前。だけど、2人はここにいない。


「おばあちゃんもな、向日葵が大好きやからね。だから、向日葵の事を大切に育てたお母さんやお父さんの大切なモノも大切にせなあかんよ」


誰かの大切なモノを大切にする。

それは、あの時も、今のあたしにも、言葉の意味は分からなかった。


おばあちゃんといたら、その理由がわかると思ったのに、おばあちゃんもいなくなってしまったから…。