夏の嵐と笑わない向日葵



「何がしてーのか分からねぇーのは、世界がどんだけ広いのかを知らねーからじゃね?」


「どれだけ広いか……?」


あたしは空から目を離し、空を見上げる嵐君を見つめる。
その横顔はやっぱりキラキラしていた。


希望に、夢に溢れている顔だ。


「始めはなんでもいいんだよ、海が綺麗とか、動物が好きだとか、好きなモノから夢が生まれたりすんだって!」


「あたしには、好きなものなんて……」


あたしに、心から好きだといえるモノなんてあった??
心が揺れ動くようなモノが…。


「あるって、向日葵にも」

「あたしにも……」



あたしの事なのに、自信満々に言いきる嵐君を不思議な気持ちで見つめたまま。



不思議、嵐君に言われると、そんな気がしてきちゃうんだから…。


「俺、船に乗ってここに来たんだけどさ」

「うん……」


ここは何時間に一本くらいでしか船が出ない。
人口もそういない島だからだ。


「船乗ってここに来た時、なんか冒険に出たみたいにワクワクしたんだよな」

「冒険……」


同じ国内だけど、そんな風に感じるんだ。
あたしがこの島に来た時はどうだったんだろう。