「ほら、行こーぜ!!」

「っ!?」


あたしの腕を掴むと、嵐君は海辺へ向かって全力疾走し始めた。


ガサガサッ、ブォーォォ!!


レジ袋が揺れる音に、物凄い疾風の音。
少しずつ近づく潮風の匂いに、何年かぶりに心が踊った。


不思議……。
何度も通った道のはずなのに、見飽きたはずの海なのに…。



「本当、広いなーっ!!」

「うんっ……」


あたしの手を掴んだまま手を上げる嵐君と、砂浜から海を眺めた。


本当だ、海ってこんなに広かったんだ。


今さら何言ってるんだろうって思う。だけど、本当に大きくて、あたしは、本当にちっぽけなんだと思った。


そう思ったら、なぜだか心が軽くなったんだ。



「うっし!!今日は海で遊ぼーぜ」

「遊ぶ??」


レジ袋を持ったまま首をかしげると、嵐君は悪巧みをするようなイタズラっ子のように笑った。