夏の嵐と笑わない向日葵



「嵐君…?」


あれ、どうして嵐君固まってるの??
何で、そんな驚いた顔……。


「向日葵ちゃん、なんで泣いてんだよ?」

「え……」


言われて初めて、頬が濡れてる事に気づいた。
それをあわてて拭う。



「やだ………」


慣れてるはずなのに、どうして今さら涙が出るの。
ずっと一人で食べてたじゃん、こんなの、いつもの事じゃん…。


なのに、涙はポロポロとこぼれて、止まってくれない。


あたしは箸を置いて、両手で顔を覆った。


カチャッ


前に座る嵐君も、箸を置いたのが音で分かった。


「ごめん」


そして、聞こえてきたのは、嵐君の謝る声だった。


え……?
なんで嵐君は、あたしに謝ってるんだろう。


何か悪い事をしたわけでもないし、むしろ謝らなきゃいけないのは、勝手に泣いてるあたしの方だ。



「何で……?」


あたしは顔を上げないまま、聞いてみた。


「もっと早く、向日葵のとこ、来るべきだったわ」


いつの間にか、あたしを呼び捨てにする嵐君。
それを嫌だとは思わなかった。



理由は分からないけど、嵐君はあたしを本気で心配してくれてるように思えた。