離れていっても仕方ない、そう思った。
だけど、この人だけは……離したくない。



「当たり前!向日葵が嫌だって言ったって、離してなんかやらねーよ」


嵐君はそう言って、あたしの額にそっと触れるか触れないかくらいのキスをした。


「嵐、言ってもいい?」

「??」



笑みを浮かべて、あたしは嵐の金髪をそっと右手を伸ばし、撫でた。キラリと、嵐と揃いの指輪が光に反射して煌めく。



「愛してる」


そう、もう息も出来ないくらいに。

瞬きを忘れるくらいにあなたを見つめていたい。


「……俺も、言っていいか?」


嵐は髪に触れるあたしの右手の指に、自分の指を上から絡ませる。そして、空いた嵐の右手は、そっとあたしの輪郭を撫でた。


「俺は、向日葵より先に死なねー。一人になんてしねーから。だから、ずっと一緒にいよーぜ」



それは、あたしが1番怖かった不安。


人は、簡単に死んでしまうから、大切な人に取り残されるあの悲しみを知りたくなくて、人を遠ざけていたのを、嵐には見透かされていたみたい。


死なないなんて、そんな保証はどこにも無いけど、嵐が言うと、本当になる気がして、信じられる。