夏の嵐と笑わない向日葵



「いやさ、昔付き合ってた彼女に、指輪が欲しいって言われたんだ」


田中さんは遠い目で空を見上げている。
それが、どこか切なかった。


「俺は、そんな指輪なんてモノに特別な考えはなかったけど、その彼女にとっては、心を繋ぐ唯一の保険なんだって言うんだ」


心を繋ぐ保険??
その言葉の意味が分からなくて、あたしは首を傾げる。


「今まで、裏切られる恋愛ばっかしてたからかな、モノに、形になっている愛情しか信じられなかったんだ」


「そうだったんですね……」



そういう意味ね。 

目に見えるものしか信じられない。だって、気持ちは不明瞭だから。


測る事の出来ないモノほど、不確かなモノはないから。