「もしかして、君が向日葵ちゃんか!」
「え、どうしてあたしの名前……」
田中さんの工房の前は何度も通っていたけど、ちゃんと話したのは今日が初めてだったはず。
あたしは、この工房の張り紙とかで名前を知っていたけど、田中さんは知らないはずだ。
「嵐君の大切な人っていうのは、君の事だったんだね」
「え!嵐君を知っているんですか??」
こんな所で嵐君の名前を聞くことになるとは思わなかった。
「その指輪、ここで手作りしたんだよ」
「そうだったんですか!」
嵐君の手作りって言ってたけど、まさかここで作ってたなんて…。
確かに、ここは家から近いし、海へ行く通り道にあるから…。
「彼女の名前が向日葵だっていうのと、思い出の花だからっていうので、向日葵を一生懸命彫ってたよ」
「そうなんですか……」
嬉しくて、あたしは笑みが溢れる。
一生懸命作ってくれた嵐君の姿が目に浮かんだ。


