夏の嵐と笑わない向日葵



学校を出ると、少し日が短くなったのか、西の空が暮れかけていた。


残暑はあるが、タオルで拭う程ではない。潮風の吹く海沿いの道をいつものように歩いた。



「学校お疲れ様!」


これまた、いつものように、黒髪に浅黒い肌の長身の男性、『田中つなぐ工房』の店主、田中さんが手を振ってくる。


いつも、爽やかだな……。

あたし、一度もまともに返事を返した事なかったのに、どうして何度も笑顔を向けてくれるんだろう。


「ありがとう…ございます」


無言でお辞儀を返して通りすぎるのが、あたしの日課だったが、向けられる笑顔に優しさを感じて、あたしは返事をした。


すると、田中さんは一瞬驚いたようにあたしを見つめて、それから笑顔になった。


「少し、寄っていかない?」

「え……?」


すると、何故か田中さんは、あたしをカフェテラスのようなお洒落な工房に誘ってきた。


不思議に思いながら頷き、中に入らせてもらう。