夏の嵐と笑わない向日葵



「なんで……向日葵、どうかしたか?」


そこでやっと、あたしの様子におかしいことに気づいたのか、嵐君はあたしの顔をのぞき込む。


「ごめん、本当に……近づかないで!」


今のあたしの顔は、きっと嫉妬と悲しみで、ぐちゃぐちゃだ。


あたしは、こんな可愛くない顔を見せたくなくて、つい嵐君を強く押し返してしまった。


ドンッ


「お、おいっ…」


嵐君は後ろに手をついて、あたしを驚いたように見つめる。あたしは、俯いたまま動けなかった。


「向日葵、何怒ってんだよ?」 
 
「怒ってないから……」


だから、本当に今だけはほっといて。
そうしたら、気持ちを落ち着けて、またいつものあたしに戻るから。


「ちゃんと話せって、何かあったんだろ?」


嵐君の事だよ。
そう言いたくても、あたしにはそう伝える勇気が無かった。


「………………」


あたしが、嵐君の問いに答えられないせいで、沈黙が訪れる。あたしの膝の上にいたノラも、何も言わずに成り行きを眺めていた。


「分かんねーよ、俺は…エスパーじゃねぇんだ」


嵐君は、怒ったような、悲しさを含んだような震えた声でそう言った。


あたしは俯いていたから、嵐君がどんな顔をしているのか分からない。