夏の嵐と笑わない向日葵



「ニャー」


ノラは縁側に腰かけるあたしの膝の上で丸まった。
そして、珍しく眠らずに一緒に月を見上げてくれる。


「ノラ、ノラは優しいね」


いつでも、あたしの傍にいてくれた。
あたし達は、誰より1人になる怖さを知ってるから。


大切な人が、大好きな人が離れていくかもしれない。
それは、本当に怖い事だ。


「夏なんて終わらなきゃいいのに…」


そうしたら、嵐君はずっとここにいてくれるのに。
ずっと……傍に入れるのに。



無償に、切なかった。


月の光も、ノラの温もりも、髪を、頬を撫でる風も優しいのに、心は満たされない。


その理由は、嵐君が傍にいないからだと分かっているのに、気づかないふりをして、月を見上げる。


しばらくそうしていると、ギシッと畳がなる音がした。
誰かの寝返りか何かだろうも気にもとめなかった。


「向日葵」 

「……え?」


聞き間違いかと思った。
願望が聞かせたら幻聴かと。


振り返ると、襖に手をかけて、あたしを見下ろす嵐君がいた。そして、それが自然の事のように、嵐君はあたしのすぐ隣に腰かける。


2人で線香花火をした時には、人一人が座れるくらいの間隔があたしと嵐君の間にはあったのに、今は、肩が触れるほど近い距離にいる。


その当たり前さえも、切ない。