「それだけだから、じゃあね」
そう言って、台所から出ていく愛美さんの背中を見送る。
愛美さんは、きっとこのまま嵐君の元へと行くんだろう。
止めたい。
なのに、止められない。
止める資格が、あたしには無い。
全力で嵐君を想う愛美さんに、何一つ叶わない。
彼女なのに、嵐君が遠く感じた。
「ニャー?」
いつの間にか、ご飯も食べずにあたしの手に頭を擦り付けるノラに、あたしは泣きそうになる。
「ノラ、何かを捨てなきゃ、人は誰かを好きになってはいけないのかな…?」
それが、あたしに残された唯一の大切な思いででも?
あたし、嵐君が好きなのに、どうして…。
全てを捨ててでも、嵐君の傍にいるって言えなかったんだろう。
まるで喉に何かが引っ掛かっているように、苦しかった。


