「おーい!嵐、こいつら好きとかいってんぞー!」
啓君が茶化すようにあたし達を指差す。
「!!」
「はぁ……」
驚くあたしとは反対に、たもっちゃんは深いため息をついた。そして、眼鏡をクイッと人差し指で押し上げる。
「馬鹿も休み休み言ってよ。でなきゃ、永遠に馬鹿、救いようがないよ」
「馬鹿馬鹿言う奴が馬鹿なんだよー!!」
燃えるように怒る啓君と氷のように静かに怒るたもっちゃんは対照的だ。
「へぇー、仲良くていいんじゃないの?」
すると、先程まで嵐君の野菜を焼いていた愛美さんがこちらへやって、そう言った。
「あのなー!早く離れろ、愛美」
「いーやーだー♪」
相変わらず、愛美さんと嵐君の距離は近い。
それに、愛美さんの事、嵐君呼び捨てにしてる。
なんだろう、この胸の不安は。
こんな風に、素直に嵐君に甘えられる人の方が、嵐君は良いんじゃないかって思ってしまう。
だからって、譲れるわけないのに…。


