夏の嵐と笑わない向日葵



「てか、俺ら自己紹介してなくね!?」


すごい重大な事を忘れていたかのように大声を上げる啓君の頭を、たもっちゃんは軽く小突く。


「いちいち声でかいよ。僕は、田森 豊(たもり ゆたか)それで、こいつは真島 啓矢(ましま けいや)」


どうやら、田森だからたもっちゃん、啓矢だから啓と呼ばれてるらしい。


「何で俺の自己紹介まですんだよー!!」

「それで、その子は?」


啓君を無視して、たもっちゃんがあたしの足元にすり寄るノラを指差した。


「ニャー!」

「この子は、ノラ。あたしの家族なの」


ノラを抱き上げて、2人に見せる。


ノラは2人を警戒したようにジッと見つめる。少し、体が震えているのが分かった。


「随分と警戒心強いね」


「人に、捨てられたのを、心のどこかで覚えているのかも。でも…嵐君とはすぐに打ち解けてたかな」


「へぇ…」


不思議。
あたしは騒がしい方ではないし、どちらかというと静かだ。

たもっちゃんも同じタイプだから、話しにくいと思ったけど……。


以外と、居心地が良いことに気づいた。



「僕は、伝記物が好きだな」

「私も、過去の英雄…っていうのかな、そういう生き方を辿る伝記物も好きだよ」


あたしはたもっちゃんと本の話で盛り上がる。